浮気を疑い始めて、証拠を集め、浮気の事実を確認するその日まで1か月とちょっとでした。
その間、頭の中がパニックになったり、気分が落ち込んだり、体が常に宙に浮いているような妙な感じがありました。
夫に問い詰める決心をし、その夜は張り裂けそうな心臓の鼓動を感じながら、いつものように午前様の夫の帰りを待ちました。
いつも帰宅するとすぐにお酒を飲みます。
その日は酔って欲しくなかったので、
「話しがあるからお酒は飲むのやめて。」
と切り出しました。
びっくりしたような表情の夫とテーブルに向かい合わせで座りました。
さあ、始まる。
そんなスイッチが入ったような瞬間でした。
もう後には戻れません。
異様な雰囲気です。
まず、決定的な物的証拠である納品書。
これは浮気相手の自宅に直送したハンドバッグの納品書でした。
なぜか我が家に納品書だけが送られてきたのです。
夫からしてみたら自宅に納品書が届くなんてイージーミス、あってはならない事でしょうが、私にとっては天からの恵みです。
それを目の前に差し出し「これ、何?」と尋ねました。
夫は不思議そうな顔をして封筒から中の書類を出して見ました。
しばらく間があってから夫は引きつった表情をして
「○○(私の名前)に渡そうと思って買った。」と言いました。
「私に?」
「そう。別の所に置いてある。」
見え透いた嘘です。
「じゃあ頂戴。」
「うん。」
実際には「ん」を言う前ぐらいに私は夫の言葉を遮り
「嘘はやめて。正直に言って。全部知ってるよ。」
と本題に突っ込みました。
夫は少ない言葉でいろいろとはぐらかそうとしていました。
はぐらかすというより、何もないとか気のせいだというような事が言いたかったのかも知れません。
私は納品書以外の証拠の事は一言も口にせず、とにかく夫の口から自供させたかったので、根競べでした。
今日を逃したら追求するチャンスすら失ってしまいそうです。
そして私は
「あなたの味方だから正直に話して。」と言いました。
しばらく経って、夫が
「お酒飲んでもいい?」と言うから
「ダメ。」と言いました。
夫は「お酒飲みながら本当の事を話すよ。」と言いました。
仕方なくお酒を飲むことを許しました。
しかしその飲み方はいつもと違い、渇いた口中を湿らすように、少しづつ啜(すす)りながらゆっくり口に運んでいました。
そして、低い声のトーンで
「さっき○○(私の名前)が俺の味方だと言ってくれたからそれを信じて正直に話す。いまから約2年ほど前だったと思う・・・」と浮気相手とのいきさつを、丁寧に話し始めました。
私が調べ上げた事とおおよそ一致していました。
私はその夜、話し合いが終わってからどう過ごしたのかなぜか記憶にありません。